2019年5月15日水曜日

新聞記者さんが教えてくれたこと

毎回、私の展覧会に取材に来てくださる
新聞記者の方が私にお話してくれたこと。

「こんな仕事をしてますけど、絵のことは
本当に分からなくて、描くのは好きでは
なかったんです。小学校の図工の授業で
先生に、『これは悪い見本だぞ』と言って
皆の前に作品を発表されたことがあって…
トラウマなんです…」
なんてこと!辛いお話です…。

色々な方に聞かれます。
「絵がうまくなるにはどうしたら?
コツはありますか?」
私はいつも、技術的なことや具体例は
出さず、抽象的なようですが
「描くことが楽しい!好きだなって
思えること。」とお答えします。

苦手でもやってみたらちょっと
楽しかった。あ、この描き方なら好きだな。
って気づいてもらえたら、
「次もやってみたい」って感じます。
次、またその次って描き続けることが
うまくなる近道のように思います。
「図工」にもありとあらゆる作品、
表現方法があって、絵は苦手でも
工作なら好きだったかもしれないのに
先生の配慮ない言動で一生遠ざかって
しまうのは本当に、悲しいことですね。

私も中学までは英語がすごく好きだったのに
高校に入って「文法、文法、読解…」て
なった時にとたんに楽しくなくなって
いい点も取れなくなってしまいました。

美術もきっと同じことです。私は
デザイン系の専門学校出身ですが
美大へ行って、来る日も来る日も
「石膏像のデッサン、デッサン、デッサン…」
てなっていたら、ひょっとしたら
絵のことも好きじゃなくなっていたかも。
もちろん絵を描くにあたって基礎は大事ですし
デッサン力も必要ではありますけれど。

好きじゃなくなったらやるのが嫌になります。
嫌になったらやらなくなります。
やらなくなったら、上手には決してなりません。

わたしは常々、絵は最低限生活するに
おいて必要なものではないという
事実にとらわれることがあります。
絵が描けるからといってすぐ仕事に
結びつくことは多くなく、
絵は食品や薬のように、必ずなくてはならない
ものではないということに。

前述の記者さんはそんな私に、
こんなこともお話してくださいました。
「絵を描くって、平和だからこそできること」
と、背中を押すように。
もちろん、戦時中も戦意高揚のための絵を
画家が描かされていた過去はあります。

ただ、自己の表現のため制限も強要も
されることなく好きな絵を描いて
それを発表できること、それは
平和な時代だからこそできること。
本当にありがたいですね。

描くのは苦手だけど塗り絵だったら楽しい。
自分では描けないけど見るのはすき。
どんな形でも、少しでも多くの方に
美術に関わる機会を作り、楽しいと思って
いただけるお手伝いができたらいいな、と
思っています。平和だからこそ。


↑作品「夢物語」
(女性の衣装は、アンデス文明時代の
織物からデザインをお借りしています)


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